大呂句会 感想
予断なき妊婦のごとき梅雨の空 いけさん
直喩が不適切で、生々しい感じがします。
校長の話中断熱中症 いつせ
状況の説明で終わってしまったようです。
下校児の傘かさなるや送梅雨 くに
これも、雨だから傘が重なっているという状況の説明になっています。
例えば「紫陽花や下校児の傘重なれる」とすれば雨が降っている様子が解ります。しかし紫陽花と雨はつきものです。
「七夕」など雨を感じさせる季語を探して置いてみるのも俳句の勉強になると思います。。
夏料理器を変えて笹添えて くに
器を変え笹を添えとうるさく感じます。俳句一読してすっと景が浮かぶようにすっきりと詠むようにしたいものです。
「一枚の笹の葉に盛り夏料理」「笹の葉を器に仕立て夏料理」など印象鮮明にする工夫が必要ですが、笹の葉と夏料理の取り合わせは誰でも考えつくこと。「美しき緑走れる夏料理」星野立子「青竹を箸に削りて夏料理」長谷川櫂など、季語を調べながら、他の俳人はどう読んでいるのか勉強するのは大切なことです。
宵涼し灯りほのかに神楽坂 ひろし
灯りをつけるので宵は不要ではないでしょうか「涼しさや灯りほのかに神楽坂」
飛沫上げ鮎輝きて飛び立てり のほほん
上り鮎が川を遡っていく様子でしょうか。鮎が飛沫を上げ輝いて上流へ飛んで行くと全部言葉で解説しています。
「飛沫上げ荒瀬を飛べる上り鮎」ぐらいでいいのではないでしょうか。
軒深くゐる青梅雨のカフェテラス ひとみ
「軒深くゐる」の「ゐる」は単なる文字の数合わせで不要です。安易に「ゐる」などと五文字にしないでリズムよく整える工夫を。
押入も開け放たれし梅雨晴間 ほしくづ
梅雨の晴れ間だから押し入れも開けるという、理屈の俳句で読む方も面白みが感じられません。「押し入れも」の「も」は
押し入れも○○もというように複数の主体を暗示させる「も」です。「押し入れを開け放ちてや」がいいでしょうか。
いつもより沢音響く木下闇 ほしくづ
この「いつもより」もかなり理屈っぽく感じられます。もっと素直に「その奥に沢音響く木下闇」とか「木下闇沢音高く響かせて」とか単純にした方が読む人の想像を刺激するのでは。
トラックや足の見えたる三尺寝 みちこ
「トラックや」と切ってあるので、分かったようでわからない句です。せめて「トラックに」でしょうか。「トラックを木陰に止めて三尺寝」
雷迫るバイクやまたも赤信号 よしこ
バイクに乗っていたら雷の音が迫ってきました、しかもまた赤信号にかかってしまった。これでは状況の説明だけで終わってしまいます。
炎帝や大仏殿をやり過ごし 梅花
炎帝は夏をつかさどる神のことですが、それが大仏殿をやり過ごしとはどう言うことか解りません。外は暑いのに大仏殿の中は涼しいと言うことでしたら、大仏殿が涼しいとだけ言えば良いのではないでしょうか。
打ち水に我も我もと群れる子ら まさと
「打水にたちまち子らの集まれる」
俳句は日記とはちがいます。何が何してどうであっと報告されても読む方は何の感動もありません。ああそうですかで終わってしまいます。感動、驚き、心の動きを5 7 5と季語をもってどう表現するのか、そこに作句の面白みがあります。
また、句を作るときは歳時記をよく読みよい句を学んでいくのも大切です。一番の勉強は人の句を読むこと。その中で自分もこんな句を作ってみたいと思う句にであったらぜひ、その骨法を学んでください。