雑感
部屋に月めくりのカレンダーがある。どこにでもあるA3ほどの壁掛けカレンダーである。
そのカレンダーには、子どもらが遊んでいる絵に、俳句がそえられている。月めくりだから、全部で十二句ということになる。今月(三月)の俳句はひな祭りにちなんで、
雛の客遊びにふけり時わすれ
である。作者の名前がないので、名のある人の俳句ではないらしいが、季語が入って五七五の韻を踏んでいるので、俳句としての形はできている。それでも、なんとなく座りの悪い俳句と感じるのはなぜだろう。「遊びにふけり」が連用形で「遊びにふけります」の省略形、「時わすれ」もまた連用形で「時わすれます」の省略形、この連用形の連なりが俳句をしまりのないものにしている。ではどうしたらいいのか。最後をしっかりと締めるには「時わすれ」を終止形「時わする」にすればいい。
雛の客遊びにふけり時わする
それでもなんとなく不満なのは、この俳句が常識の域を出ていないから、いっそ「遊びにふけり」を取ってしまって、
雛の客時を忘れてゐたりけり
とするのもいいが、それでもまだ常識の範囲、俳句はなるほど難しい、カレンダーを眺めながらそんなことを考えた次第である。(m)