使ってみたい季語 五月雨(さみだれ)
「五月雨」といえば芭蕉の、「五月雨をあつめて早し最上川」がすぐ思い浮かぶ。
「五月雨(さみだれ)」の「さ」は、五月(さつき)の「さ」や早乙女(さおとめ)の「さ」同様、神にささげる稲をあらわす。「みだれ」は「水垂れ」で梅雨の雨の意、昔は、この時期が田植どきで、「五月雨」は稲をはぐくむ梅雨時の雨ということになる。新暦の五月に降る新緑の明るい雨と思っていたのなら間違い、鬱陶しい雨が「五月雨」の本意である。芭蕉の「最上川」の句も、梅雨時の出水を集めてごうごうと流れる最上川である。「五月雨」同様「五月晴」も昔の田植のころ晴れ間で、梅雨時の晴を意味する。「五月闇」や「五月富士」も梅雨時の季語である。
五月雨の降残してや光堂 芭蕉
「降残してや」が味わい深い。
さみだれや大河を前に家二軒 蕪村
今にも流されそうな家二軒。
さみだれや青柴積める軒の下 芥川龍之介
柴も湿っって火がつきにくくなる。
はらはらと椎の雫や五月闇 村上鬼城
昼間の闇であろうか。雨上がりの椎の巨木。
うれしさや小草影もつ五月晴
小さな雑草の小さな影、久しぶりの梅雨の晴間がうれしい。
(m)