日脚伸ぶ
日暮れが一番早いのは冬至十日前ころといわれる。一年で一番日が短いのは冬至(正確には冬至の節入の日)であるから、なにやら矛盾しているようだが、冬至のころは夜明けが一番遅いため、一年で一番日が短いということになる。冬至に入る頃はほんの少しではあるが、日没が遅くなり始めている。
冬至を境にして、少しずつ日が長くなり、一月も終わりのころになると、ずいぶん日が長くなった、と感じるようになる。これが「日脚伸ぶ」という晩冬の季語、もう春が近いという気分に裏打ちされた季語である。
ひと〆の海苔の軽ろさや日脚伸ぶ 鈴木真砂女
日脚伸ぶただそれだけのことなれど 谷口忠男
一句目は、「海苔の軽ろさ」がそのまま心の軽ろさにつながり、「日脚伸ぶ」と響きあう。二句目は、「ただそれだけのことなれど」のあとに「心浮き立つことよ」が省略されていると読んでいい。どちらも春を待つ心がよく出ている俳句である。(m)