吟行 蓮根掘り
十一月も後半の一日、新潟県五泉市の木越しというところに蓮根掘りを見に行きました。
五泉市は上水道が地下からの湧き水という水質に恵まれたところで、その水ではぐくまれる蓮根は、味、歯ざわり、色の白さと三拍子揃った逸品、「越後美人」と名付けられて出荷されます。
その日は、小春日和の蓮根掘りの作業でしたが、新潟のこの季節は時雨模様になることが多く、腰まで水に使っての作業はかなりの重労働です。この先、正月用の蓮根を掘るころには、雪のなかの作業になることも多く、外気より腰まで使っている水のほうが温かいこともよくあるとのことでした。
すっかり枯れきった蓮田の中に水を吐く機械を入れて、掘りあげた蓮根を洗いながらその場で選別してゆきます。いいものは、蓮根舟にのせ、悪いものはそのまま泥水の中に捨てるのですが、中には見事な形のものまで惜しみなく捨てられます。「もったいない」というと、「煮ると黒く変色するやつで売り物にならない」とのこと、これも長年の感で一目で見分けることができるそうです。
「もっていけ」と帰り際に泥だらけの蓮根までいただきました。すぐ目の前にそびえる菅名岳がくっきりと美しい午後でした。(m)
それでは吟行句をいくつか。
蓮根掘る水吐く機械うならせて
蓮根掘る五頭山日和たまはりて
蓮根を掘りつくしたる月夜かな
死なぬことが長生きのこつ蓮根掘る
もつてけと泥れんこんを渡さるる
ゼロ戦に乗りし昔を蓮根掘り
蓮根をきんぴらにして酒二合
蓮根掘り今日はぱらつく雨の中
蓮根の真水くぐりし白さかな
掘り終へてまた漣の蓮田かな