雪解川名山けづる響かな 前田普羅

【鑑賞】
雪解川になすすべもなく削られる名山。しかし、削られることで、山は益々威容をなし、名山を名山たらしめる。前田普羅は、山を愛した俳人。関東大震災で家財一切を失ない、報知新聞富山支局長として富山に移り住む。句は富山に移る以前のもの。
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今日の季語_雪解
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雪解水、雪解川、雪解風、雪解雫、雪解野
【関連季語】
雪しろ
【解説】
暖かくなって雪が解けることをいう。雪国の人にとって心待ちの雪解けである。
【分類】
仲春・地理
【例句】
| 白雲や雪解の澤へうつる空 | 太祗 |
| 踏つけし雪解にけり深山寺 | 太祗 |
| 色々に谷のこたへる雪解かな | 太祗 |
| 小庇に薪並おく雪解哉 | 一茶 |
| 鍋の尻ほし並たる雪解哉 | 一茶 |
| 雪解けて村一ぱいの子ども哉 | 一茶 |
| 雪解や貧乏町の痩子達 | 一茶 |
| 門前や子供の作る雪解川 | 一茶 |
| 世にすめばむりにとかすや門の雪 | 一茶 |
| 雪解けてくりくりしたる月夜かな | 一茶 |
| 沙汰なしに雪のとけたら山家哉 | 一茶 |
| 十ばかり鍋うつむける雪解かな | 一茶 |
| 町住や雪とかすにも銭がいる | 一茶 |
| 雪解や障子まばゆき横日影 | 津宣 |
| 雪仏きえてあとにや仏の座 | 重供 |
| 雪解や妹が炬燵に足袋片シ | 蕪村 |
| 雪どけやけふもよしのゝの片便 | 蕪村 |
| 雪とけてみどりの色や圃土 | 青蘿 |
| 老の身のことしも雪に消まけぬ | 也有 |
| 雪解ややうやう四百八十寺 | 蓼太 |
| 白波となり行く沖の雪解かな | 暁台 |
| 雪解や深山曇りを啼く烏 | 暁台 |
| 雪消えて麦一寸の野づら哉 | 暁台 |
| 七草や戻りに雪消て又 | 一瓢 |
| 雪水や溜りて青し萌ゆる草 | 桃人 |
| 大原や落つる野川の雪の水 | 伊珊 |
| 雪どけの音聞て居る朝寝哉 | 几董 |
| 雪解けや竹はね返る日の表 | 正岡子規 |
| はしためのかもじ干したる雪解かな | 正岡子規 |
| 雪解に馬放ちたる部落かな | 正岡子規 |
| 雪解けて雪踏の音の嬉しさよ | 正岡子規 |
| 商人が来りて歩く飛騨雪解 | 前田普羅 |
| 竹を伐る人にやむなし雪解雨 | 前田普羅 |
| 雪解川名山けづる響かな | 前田普羅) |
| あかあかと白樺を透く雪解川 | 飯田蛇笏 |
| 切株や雪解けしたる猿茸 | 飯田蛇笏 |
| 機街の一と筋さきに雪解富士 | 飯田蛇笏 |
| 雪解けぬ跫音どこへ出向くにも | 飯田蛇笏 |
| 松に帆や雪消の磯家まださむし | 飯田蛇笏 |
| 月光の休まず照らす雪解川 | 飯田龍太 |
| 荒魂の陽の海に入る雪解川 | 飯田龍太 |
| 野菜市場にさんさんと雪解星 | 飯田龍太 |
| 顔近くある灯に目覚め雪解どき | 飯田龍太 |
| 天日の峰にまぶしく雪解かな | 松瀬青々 |
| 白山の國に押し出る雪解かな | 松瀬青々 |
| 城崎に雪雫して蟹豆腐 | 松瀬青々 |
| 一村は南下りに雪解かな | 松瀬青々 |
| 夕星やおとろへそめし雪解風 | 相馬遷子 |
| 雪解けて野は枯色を極めたる | 相馬遷子 |
| 雪解風山々たゆく光りあふ | 相馬遷子 |
| 風に聞く雪解山河の慟哭を | 相馬遷子 |
| こゑ出さばたちまち寂し雪解砂洲 | 橋本多佳子 |
| 水兵のつれだち来るや雪解風 | 久保田万太郎 |
| 浅草の茶の木ばたけの雪解かな | 久保田万太郎 |
| 雪解風連翹黄を発しけり | 久保田万太郎 |
| 雪解風鳩下りて来てむらがれる | 久保田万太郎 |
| 雲一つなくてまばゆき雪解かな | 久保田万太郎 |
| 炭俵に烏樟匂ひ雪解かな | 室生犀星 |
| 石斑魚に朱いすぢがつく雪解かな | 室生犀星 |
| 全山の雪解水富士下りゆく | 山口誓子 |
| 鉄橋で越す雪解の大井川 | 山口誓子 |
| 赤門の雪解雫の中にあり | 山口青邨 |
| かんばしく水車粉をひき村雪解 | 皆吉爽雨 |
| 富士雪解せり宝永は終んぬる | 皆吉爽雨 |
| にぎはしき雪解雫の伽藍かな | 阿波野青畝 |
| 雪解くる漏に笛吹く天女かな | 阿波野青畝 |
| 相喚(よ)びて雪解の谷を出でにけむ | 加藤秋邨 |
| 雪解谷顔なき仏宙に湧き | 加藤秋邨 |
| 大いなる雪解の中に生きて逢ひぬ | 加藤楸邨 |
| 目ひらけば母胎はみどり雪解谿 | 加藤楸邨 |
| 梅干の瓶あらひけり雪解川 | 会津八一 |
| 雪解の川口上る白帆かな | 会津八一 |
| から井戸に雪消え残る畑かな | 会津八一 |
| 新月の松山めぐる雪解川 | 角川源義 |
| 雪解しづく鶴川村は遠きかな | 角川源義 |
| 雪解水田にあふれをり大鴉 | 角川源義 |
| 富士の雪解けぬまげんげさかりなる | 渡辺水巴 |
| 大富士の雪解けず二度召され征く | 渡邊水巴 |
| 雪消える方へ傾き雪間草 | 後藤比奈夫 |
| 六十年山廬の雪消聞かれしと | 石橋秀野 |
| 雪雫甲斐の大鵬翔たすなる | 石橋秀野 |
| 研ぎあげて干す鉞や雪解宿 | 芝不器男 |
| 入日中濁り増しつつ雪解川 | 松村蒼石 |
| 山中は雪解空より糸の滝 | 松村蒼石 |
| 辛夷やせて花満たせをり雪解谷 | 松村蒼石 |
| 雪解川海に流れ入るうひうひし | 松村蒼石 |
| 雪解水棚田つらぬき瀬をなせり | 松村蒼石 |
| 旅人におくれて峡の雪解かな | 東洋城 |
| 雪解や谷へ谷落ち早瀬川 | 東洋城 |
| 干し鮫の目を吹き抜くる雪解風 | 岸田稚魚 |
| 性欲の雪解け渉りゐるごとし | 岸田稚魚 |
| 暮れどきの掌の上に載す雪解山 | 岸田稚魚 |
| 母を訪ふひとかたまりの雪解風 | 岸田稚魚 |
| 猫とんで宙にとどまる雪解風 | 岸田稚魚 |
| 雪解けの五丁ばかりを恋ふるかな | 岸田稚魚 |
| 雪解風旅の肺鳴るたはやすく | 岸田稚魚 |
| 雪消田の一本道を山に継ぎ | 岸田稚魚 |
| 雪消野に昨日よりも胸薄く佇つ | 岸田稚魚 |
| 雪解くる道は療養所を出でゆく | 石田波郷 |
| 雪解けの雫忙しや藪柑子 | 五十嵐播水 |
| 雪解水くろがねの底なせりけり | 大野林火 |
| 雪解雫教室に鳩飼つてゐる | 沢木欣一 |
| 雪解川烏賊を喰ふ時目にあふれ | 細見綾子 |
| 朝からの雪解雫の翌檜 | 村越化石 |
| 見えぬ眼のまなぞこにまで雪解光 | 村越化石 |
| 常磐木の香や一月の雪雫 | 村越化石 |
| 一間得し雪解交響しつつあり | 藤田湘子 |
| 五六本萱の撥ねたる雪解かな | 藤田湘子 |
| 白山の雪解うながす夜の太鼓 | 藤田湘子 |
| 町なかは藪も厨も雪解水 | 飴山實 |
| 雪解けの渚をわたる海女の葬 | 飴山實 |
| 墨の香や夜空の中の雪解富士 | 宇佐美魚目 |
| 雪消えて鯉うつうつと目を病めり | 宇佐美魚目 |
| この寺の千年椎の雪解かな | 大峯あきら |
| 雪解水大態笹をなぎたふし | 大峯あきら |
| 村ぢゆうの畦あらはるる雪解かな | 長谷川櫂 |
| 雪解けて大温室は水の音 | 長谷川櫂 |
| 籟とほく鳴り出て松の雪解かな | 上田五千石 |
| 雪解けの底鳴り水に落椿 | 石原八束 |
| 雪解けの村の一戸の剥製屋 | 大木あまり |
| けものの香失せたる檻や雪雫 | 大木あまり |
| 雪解雫とはぴちぴちと跳ねどほし | 清水芳朗 |
| 雪解風竹に漆を塗つてをり | 武藤紀子 |
| 朝市に青もの並べ雪解風 | 武澤好美 |
| 若き日の夢も芥も雪解川 | 田中紫春 |
| 葉山葵の束ひたしあり雪解水 | 岩井善子 |
| ざくざくと秣を刻む雪解かな | 北側松太 |
