一句を読み解く33

鎌倉を生きて出でけむ初鰹 芭蕉
俳句は読み違えの文芸でもある。字数が限られていて言葉を言い尽くせないが故に起きる勘違いであるが、時に、その勘違いに味わいのある解釈が生まれたりするから面白い。
芭蕉の「初鰹」の句。私は長い間、「鎌倉を生きて出る」ものが芭蕉自身のことと思っていた。「いでけむ」の助動詞「けむ」を「何々しようではないか」という意思の助動詞と誤解していたからである。芭蕉が何かの事情で患って「鎌倉をさあ生きて出ようではないか」というわけである。ところが「けむ」には「意思」を現す働きはない。推量の助動詞なのである。推量ならば、「鎌倉を生きて出たのだろう」ということになる。何が、もちろん「初鰹」がである。
鎌倉沖で取れた初鰹は早馬、早飛脚で生きたまま江戸まで運ばれ、江戸っ子はそれを高値で求めたという。芭蕉の句は、鎌倉を生きたまま出荷された初鰹の活きのよさをたたえたものである。(kinuta)
