妹のこと①
妹が亡くなった。笑いかける遺影はまだ少女のようで、看病にあたった長男を看護婦さんが恋人と間違えるほどだった。六十になんなんとしているのに、髪は黒々として、眼鏡すら必要としなかった。若々しいゆえに病の進みも速かったのだろう。見切り発車の治療だったが、間に合わなかった。
父も母もすでに鬼籍にはいっているが、死者と向き合う時いつも考えるのは生きている自分、この世に留まっている自分だ。
仏教ではこちらの岸を此岸、向こうを彼岸と呼ぶ。此岸にいる我々は稀に訪れる近しい者の死に様々な思いを抱く。悲しみや怒り失望などその感情の渦は、慰めや励ましや涙を流す事によって一時は治まってもまた最後に自分のところに戻ってくる。そして生きている我々に沢山のことを考えさせ、気付かせる。
死者は語らずとも、生きている者に問いかけ、自問自答であれ胸の内になにか語らせるのかもしれない。(立)
