今日の季語_紫陽花
あぢさゐのどの花となく雫かな 岩井英雅
紫陽花に雨はつき物、紫陽花といわれて連想するのはまず「雨」である。したがって紫陽花を句にするときは雨を詠みこんではいけない、と教わる。
紫陽花に雨降りやまぬ一日かな
というように、雨を詠みこんではごく当たり前の俳句になってしまう。
掲出の句、雨を詠んではいないが、かぎりなく雨に近いところを詠んでいる。それでいて当たり前にならず新鮮さを感じるのは、「かぎりなく雨に近いところ」というわずかなずれのせいである。常識のすぐ近くにある新鮮さであろうか。
「風鈴と風」「団扇と風」「蛍と闇」「向日葵と太陽」「虹と雨」など、つきすぎといわれる取り合わせはいくらでもあるが、「わずかなずれ」を詠むことで新鮮さを生むことができるかもしれない。(m)
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かたしろぐさ、四葩の花、七変化、刺繍花、瓊花
【関連季語】
額の花
【解説】
アジサイ科アジサイ属の落葉低木。梅雨どきの花である。花びらに見えるの四枚の萼である。ピンク、白、青、紫など色はさまざま。日々、色が変わるので「七変化」ともよばれる。
【分類】
仲夏・植物
【例句】
| 紫陽花や藪を小庭の別座敷 | 芭蕉 |
| 紫陽花や帷子時の薄浅黄 | 芭蕉 |
| あぢさゐを五器に盛らばや草枕 | 嵐雪 |
| あぢさゐに喪屋の灯うつるなり | 暁台 |
| あぢさゐや仕舞のつかぬ昼の酒 | 乙二 |
| 思ふ事ならず紫陽花咲きうすれ | 岡本松浜 |
| ぼんやりと紫陽花のある障子かな | 岸本尚毅 |
| 紫陽花や子を生み終へし高いびき | 岩田由美 |
| 大學の中のあぢさゐ咲けるみち | 久保田万太郎 |
| 裏川に水満ちて濃き四葩哉 | 金尾梅の門 |
| 紫陽花の花に日を経る湯治かな | 高浜虚子 |
| 紫陽花や筧に口をそゝぐ尼 | 寺田寅彦 |
| 紫陽花の無き寺もまたよかりけり | 新倉一光 |
| 紫陽花に濡るる一日山の家 | 神蛇広 |
| 紫陽花に秋冷いたる信濃かな | 杉田久女 |
| 思ひ出して又紫陽花の染めかふる | 正岡子規 |
| 紫陽花やはなだにかはるきのふけふ | 正岡子規 |
| 紫陽花にたばしる雹や雨の中 | 西島麦南 |
| 紫陽花に置いたる五指の沈みけり | 川崎展宏 |
| 紫陽花に伊豆の廃家の大月夜 | 大峯あきら |
| 紫陽花や折りかかさぬ母と住む | 中村和子 |
| どうどうと山雨が嬲る山紫陽花 | 長谷川かな女 |
| 紫陽花や白よりいでし浅みどり | 渡辺水巴 |
| 紫陽花に八月の山高からず | 飯田蛇笏 |
| 鍛冶の火を浴びて四葩の静かかな | 富安風生 |
| 紫陽花となるまでのただ無色かな | 平井照敏 |
| 紫陽花や人にやさしき昨日けふ | 片山由美子 |
| 紫陽花に馬が顔出す馬屋の口 | 北原白秋 |
| 紫陽花や峰の剣尖町空に | 有働亨 |
| 紫陽花の浅黄のまゝの月夜かな | 鈴木花蓑句集 |
| 紫陽花の真夜の変化はわれ知らず | 鈴木真砂女 |
| あぢさゐに罪ほろぼしといふ語あり | 鈴木真砂女 |
| あぢさゐや死後の涙は誰が流す | 鈴木真砂女 |
| あぢさゐや雨を憩ひのひと日とし | 鈴木真砂女 |
| 暮れゆけば明るきうしほ濃紫陽花 | 鷲谷七菜子 |
| あぢさゐのどの花となく雫かな | 岩井英雅 |
| あぢさゐに触れて鋏のくもりけりかな | 高田正子 |

