思いを捨てる
人に判るように詠む、相手に伝わるように詠む、俳句に限らずとも、どんな文章にも言えることだが、これがなかなか難しいようである。ネット句会などの作品を見ていると、三分の一くらいの作品はよくわからない俳句である。原因はいくつか考えられるが、「俳句は省略が大切」という思い込みが災いしているのかもしれない。多くの事柄を十七文字の中に詰め込もうとすれば、自ずと言葉を省略しなければならなくなる。言葉を省略すれば通じなくなるのは当たり前、言葉を省略するのではなく、その前に、言いたいことを省略することが大切である。有り余るほどの思いがあったとしても、俳句ではその中の一つしか詠むことができない。まずは、自分の思いは切り捨てる、言葉を切り捨てるのではなく、思いの方を切り捨てる、これがすっきりと詠む第一歩であろうか。切り捨てられた思いは、また別の形で俳句としてよみがえることができるというもの。(m)_大呂18号編集後記より