まいまい句会感想
原人の血の騒ぎだす枯野かな いつせ
いいたい事はわかりますが、もう少し抑えた表現の方がよいようです。例えば、「太古のごとく枯野あり」とか。
湯豆腐の豆腐一丁だけ買ひに いつせ
「一丁だけ買ひにの「だけ」に少しひっかかるものがあります。
松柏のゆるる水面や冬ざるる くに
くにさんの句は形になっていますが、少し言葉にもたれているところが感じられます。例えば「松柏」でなく他のものを置いても、成り立つような句ではないでしょうか
猫に似る子の泣き声や漱石忌 ひろし
猫と漱石がつきすぎのようです。
薪爆ぜて暖炉の炎熱り立つ ヤチ代
「薪爆ぜて」が説明で、句としても少しあたり前ではないでしょうか
冬風や波立て奔る信濃川 昌人
「波逆立てて信濃川」「波あらあらと」など言葉をなめらかにしてはどうでしょうか。また、「冬風」だとあたりまえすぎますので他の季語を工夫してみてください。
窓外のしぐれて流るる滴かな 昌人
普段の話し言葉書き言葉で窓の外とはいいますが、窓外とはいいませんね。俳句だからと言葉を省略して使うのはよくありません。「窓の外ながれてをりぬ時雨かな」
やってくる猫に主問ふ漱石忌 朝男
猫と漱石忌が少し付きすぎのようでよくありません。
園庭の黄金の落葉掃かないで 繁男
字余りになっても「金色の落葉」としたほうが良いと思います。
宿五軒しぐれは雪に露天の湯 繁男
「宿五件」が説明です
暁光の射したる水面鴛鴦の沓 富田山
富田山さんの句は一応形にはなっているのですが、気分が先行している気がします。俳句は平明な言葉で一読して理解出来るのが理想です。
木洩日や落葉踏みゆく雑木林 富田山
下五の「雑木林」が説明です。
夕時雨白壁の街ひそめをり 富田山
「しんとして白壁の町夕時雨」としたほうが句がなめらかではないでしょうか
(立)