伽羅蕗
蕗は初夏の季語であるが、春の比較的早い時期に採ることもできる。春の蕗は柔らかく、皮を剥かずとも食べられるが、立夏を過ぎるとさすがに繊維は強くなり、皮剥きも灰汁出しも必要になる。
伽羅蕗に適した蕗はさらに季節が進んだ蕗、蕗の葉に虫食いの穴ができて、茎が針金のように固くなったくらいのものがいい。
採取した蕗は三センチほどに切りそろえて、二晩ほど水を替えながら真水に晒して灰汁抜きをする。その際、伽羅蕗に適さない柔らかい蕗は、切口が蛸の口のようにめくれてしまうので、水の中からあらかじめ取り除いておく。
水に晒しておいた蕗に錆色が出てきたら、いよいよ煮炊きになる。大切なことは皮を剥かないこと。皮のまま炊くことで、蕗は長時間の煮炊きに耐えられる。より固い蕗を使うのもそのためである。
水は蕗から出るので必要ない。酒と醤油とみりんは好みの量、昆布や鷹の爪も味を引き立てるのに欠かせない。弱火で四五時間は炊き込む。水分がなくなれば酒を加える。酒が苦手ならば、だし汁を加える。時々味を見て、必要ならば醤油を足す。はじめ醤油は控えめ、少しづつ味を濃くしてゆくのが失敗のないやり方。
炊き込んで蕗がしんなりとしたらできあがり。少し薄めの味付けがお勧め、日保ちはしないが酒の肴には最適である。(m)