闇の夜は闇を吹きけり秋の風 闌更
池波正太郎の小説「鬼平犯科帳」には二通りの盗賊が登場する。お盗(つと)めの三か条-盗まれて生活がたちゆかなるものからは盗らない。押し入った先で人を殺めない。女を犯さない。これをきっちり守る盗っ人。これに対して、急ぎ働きの盗っ人は、皆殺しも厭わない凶賊である。前者は押し入る準備に充分時間をかけて、「秋風の吹くころに押し入ろう」ということになる、一方、後者は、そんな悠長なことはせず、明日にでも押し入ろう、気づかれたら皆殺しにすればいいという立場。なぜ、「秋風が吹くころ」かといえば、夏場の寝不足で疲労がたまりにたまって、秋風が吹くころには皆がぐっすり眠りに落ちる。足を踏まれても目覚めないから仕事がやりやすいというわけである。盗みを働くにも自然の摂理に逆らわない誠に殊勝?な盗賊ということになる。どちらも結局はお縄になるのだが、お目こぼしがあるのは三か条の盗賊で、急ぎ働き派はことごとく鬼の平蔵に切り殺されることになる。
闌更の句の秋風の吹きぬける闇、夏の疲れがたまっているひとたちをすっぽりと包み込んでぐっすりと眠らせている。それは、三か条の盗賊が跳梁跋扈している闇でもある。 (m)「季語 秋の風」
