際_きわ
「際(きわ)」を辞書で引くと
1 あと少しで別のものになろうとするぎりぎりのところ。境目。「生え際」「波打際」
2 ある物にきわめて接近した所。すぐそば。「壁際」「山際」「窓際」
3 物事がそうなろうとするまさにそのとき。「今わの際」「入り際」「死に際」「往生際」
4 物事の窮まるところ。限界。際限。
とある。1と2は空間の「際」であり3は時間の「際」4はひとの心のなかの「際」であろう。いずれにしても、際はものごとの輪郭であり、ものごとのけじめである。この「際」をどう処すかでその人の佇まひもおのずと決まってくるというもの。物事に執着すれば「往生際が悪い」ということになるし、死期にのぞんでうろたえれば「死に際が悪い」ということになる。反対に「際」を潔くすればその形は美しくその心は爽やかである。
俳句もまた、この「際」がたいせつである。ひとつは輪郭を感じさせる「際」の俳句であり、ひとつは執着を離れた「際」の俳句である。
たとえば
今朝秋の伊豆の見えたる机かな 長谷川櫂
などは、心の輪郭がくっきりと現れた、濁りのない俳句といってもいいであろう。俳句に余計なことを託そうとしない、五七五に現れた文字だけで完結しようとする俳句こそ、まさに「際」のある俳句、輪郭のある俳句である。俳句は余韻が大切とされるが、余韻は「さてこの句は何が言いたいのだろう」と思考を立ち止まらせることではない。余韻とは一句の完結を見たのちに静かに心に響いてくるものである。逆に言えば、読み手のが一句を完結できなければ余韻は生まれてこないともいえる。
くろがねの秋の風鈴なりにけり 飯田蛇笏
この句も切字「けり」によって完結を見ることで「際」立っている俳句である。(m)

