短いこと
俳句の何が魅力か、と問われれば、即座に「短いこと」と言えそうである。俳句以外の文芸をたしなんだことのある人なら、原稿用紙の空白のマス目が、まるで牢獄の格子のように、心に重くのしかかってくる気分を幾度となく味わったことがあるに違いない。文章を書くということは、それだけ大変なこと、原稿を引き受けたはいいが、何日たっても何も浮かんでこないなどと言うことは、多くの人が経験していることである。
その点、俳句は一つ仕上げるのに十七字しか必要ない。季語を入れよとか切字が大切であるとかいう細々としたことも、俳句を作っていくうちに自然に身についてくるから、努力嫌いのひとにはもってこいの文芸と言えそうだ。
短いことは、俳句の世界に入りやすい絶対の条件であろう。そんなわけで、大呂俳句会は、今回も、数人の新会員を迎え入れることができた。短いから作りやすい、はじめはそれで十分、それで俳句が楽しくなれば、次の段階もおのずと見えてくるに違いない。短か過ぎて思いを伝えられないと思ったら、短歌や詩に行けばいいだけのこと、短さを大いに楽しむ、これが俳句の醍醐味の一つであることは間違いない。(m)_大呂7号のあとがきより