季語散策32 帰り花
初冬に季節はずれの花をさかせることをいう。桜、つつじ、たんぽぽなど色々な花に見られる。
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凩に匂ひやつけし帰花 芭蕉
「匂ひつけしや」ではなく「匂ひやつけし」。「匂ひ」が強調されている。
日あたりてまことに寂し返り花 日野草城
「まことに寂し返り花」はあたりまえ、「日あたりて」に意外性。
薄日とは美しきもの帰り花 後藤夜半
薄日の化身のような帰り花。
太陽のとほれる道に返り花 長谷川櫂
日を存分に浴びている帰り花。
寂庵の仏に捧ぐ返り花 高田正子
「寂庵」は瀬戸内寂聴師の庵。「寂」という一字と「帰り花」が静かに響きあう。