一匹丸ごと皿に乗ったずわい蟹、足を折りたたんでのせられた様子が「畏まる」ということであろうか。(m)「季語 越前蟹(冬)」
鰭酒やあひかはらずの毒舌家 岬雪夫
鰭酒をあおって毒舌がますます冴えわたる。(m)「季語 鰭酒(冬)」
まいまい句会感想⑦
了われし畑に影す葉鶏頭 冬菊
「了われし」なんと読んだらよいのでしょうか。普通に「終わり」とした方がわかりやすいと思います。また、「了われし」は「了わりし」ではないでしょうか。あまりに難しい文字を使うとその句は読んでもらえない可能性があります。また言葉に頼った句は考え物です。「鶏頭の影高々と畑仕舞」
接岸の綱とんで来る小春凪 文夫
点が入っている句なのですが、なぜ綱が飛んで来るのかよくわかりませんでした。
秋刀魚好き骨一本残しをり 豊依子
くどくど述べすぎのように思います。「骨一本さらに残して焼き秋刀魚」くらいで十分ではないでしょうか。
放水のアーチ高々飛騨の秋 凡士
点が入っているのですが「放水のアーチ」が消火訓練だとわからないとこの句は意味が不明の句になってしまします。
猪を逆さに吊るす猟師かな 暦文
猟をした後の猪でしょうか?このままでは単なる報告の句ように思います。
(立)
まいまい句会感想⑥
シャンソンに合はすがごとく散る枯葉 青水
枯葉とシャンソン付きすぎではないでしょうか。
林相やみどりも深し初しぐれ 石下文子
一読「林相」がこなれない述べ方ではないでしょうか。
烏瓜枝に垂るるや峠道 田村
俳句はここから。このままではただの報告ではないでしょうか。例えば「峠道あちらこちらに烏瓜」枝に垂るるは説明です。
苅田にて狼煙のごとく青空に 田村
「にて」は説明。
(立)
まいまい句会感想⑤
母からの小包届く冬隣 森本哲雄
「母からの小包」とあれば「届く」が余分だと思います。「母からの荷より手紙や冬隣」など省略を大切に。
パートの主婦釣瓶落しの家路かな 森本哲雄
これは因果関係の俳句ではないでしょうか。
不細工な形のままに熟柿落つ 萬幸
柿の不細工な形が想像できません。このままでしたら「不細工な形のままに花梨落つ」
真夜中に相撲太鼓や月野原 諸子
月の野原で狸が相撲をとっているという事でしょうか。少し無理では?
枯れ葉舞う喪主無き友のお別れ会 政代
全て述べてしまった句だと思います。また季語がべた付きでは?
(立)
まいまい句会感想④
こげるみそ馬籠の秋と石段と 秋ひろ
JRのポスターにあるキャッチコピーのようです。
冬御膳九谷尽くしになほ旨し 照代
何もかも並べたてて個人の感想と報告に終わっているように思います。冬のご馳走の事か九谷焼の事かどちらかを。例えば「古九谷焼の深き紫冬の海」とか「大皿に花のやうなる松葉蟹」など。
温もりを夫と分け合うおでん鍋 照代
冬来れば夫と苦楽の五十年 照代
確かにその通りなのでしょうが、これは日記を句にしたようで第三者が読んでも全く面白くありません。
身にしむや便りも絶えて初時雨 笑子
「身にしむ」「初時雨」季語が二つあっても悪いことはありませんが、この句の場合どちらか一つで十分ではないでしょうか。
(立)
まいまい句会感想③
川風の音はカタカナ今朝の冬 ふさこ
「川風の音はカタカナ」がよくわかりません。
嬰児の指を離れぬ毛布かな 以と
「離れぬ」とするより「離さぬ」だと思います。「赤んぼの指を離さぬ毛布かな」「眠りても赤子が離さぬ毛布かな」当たり前で面白くありません。
ラジオ体操を聞きゐる蒲団かな 以と
ラジオ体操など聞きゐるものでしょうか?
草臥れて人影のなき秋の浜 一竿
このままでは「草臥れて」が用をなしていないように思います。「人影のなき秋の浜」を生かす言葉を探すのが俳句だと思います。これはご自身が心に感じた事なので心の声に耳を傾けて作るべきで、安易に「草臥れて」と置いてもよい俳句にはならないと思います。
菊手水人は心も洗われて 弓楽
「菊手水」がわかりません。
(立)
まいまい句会感想②
髪切るや赤きマフラー巻き直す せつこ
このままでもよいのですが「や」と切らずに、「髪切つて赤きマフラー巻直す」でもよいと思います。
空海の説きし讃岐の小春かな のび太
「空海の説きし讃岐」とは何なのかわかりませんでした。
神々は何の会議か神無月 のるん
これも季語の説明のように思います。
黒髪の艶は母似よ七五三 ひとみ
俳句を長くしているとこのような句はどんどん出来ると思います。目元が似ている、色白である、えくぼがあるなど。ここから先を詠むようにされるとよいと思います。
(立)
まいまい句会感想①
八百万の神が集いて出雲かな 遊心
これは季語(神無月)の説明ではないでしょうか。
黄落や積み木つむよに家建ちて いくよ
意味は解るのですが、「積み木つむよに」がせせこましい感じがします。普通に「積み木つむごと」でもよいのではないでしょうか。もしくは「積み木つむやうに家建つ小春かな」などで良いのではないでしょうか。
秋扇縁のほころび目立つほど くらっ太
使い古していたんだものも秋扇といいます。このままでは当たり前では?
青空もまぶしむ蜜柑明かりかな すずめ
蜜柑明かりをまぶしんでいるのは青空の感じがするのですがそれでよいのでしょうか。「青空のまぶしき蜜柑明かりかな」と直せますが、やや当たり前。
(立)
大呂30号ができました
購読を希望される方は「お問合せ」からお申し込みください。(1000円・送料込)入会を希望される方には見本誌を贈呈いたします。
【俳句作品抜粋】
警官も板前もゐて夜学の灯 河野凡士
秋風に戻されて来し手紙かな 中井雪江
人影もなき過疎なれど豊の秋 成田帆里
この草も食べたことあり終戦日 岡崎政代
何もかも奪ひさりけり秋出水 浅見弓楽
箱庭の水車は風に回りけり 新暦文
石垣の間に咲いて月見草 寺嶋法子
甚平の風を着てゐるごときかな 根岸文夫
毛繕ふ猿の親子の日永かな 今井律子
釣場までふみしだきゆく夏の草 久田茂樹
青田風百万石を吹き渡る 三浦冬菫
老鶯や結納を待つ六畳間 岩見功
美しき蝶かもしれず毛虫焼く 辻雅宏
客はみな登山靴なりとろろ汁 米元ひとみ
縞馬は尾つぽも縞目秋うらら 播磨京子
この山の神の仕業か滝凍つる 森本哲雄
青春の日をさらしたる曝書かな 田村節子