俳句の覚悟
俳人長谷川櫂による「ネット投句」は、インターネットを利用した俳句投句サイトである。毎回六十人ほどが参加し、投句総数は百八十句くらいになる。、優秀作品は入選、さらにいい作品は特選に選ばれる。
その「ネット投句」のシステムを管理しているのだが、この投句システムの特徴は、締切まで何度でも投句した句の訂正が可能であるということである。この訂正をよく利用する投稿者もいれば、潔く一度で終わる投稿者もいる。訂正を推敲の場と解して何度も訂正をかけてくるのかもしれないが、面白いことに、何度も訂正した作品が入選・特選に選ばれることはあまりない。むしろ一回できっぱりと打ち切った句のほうが、選ばれているようである。勿論、そうした、思い切りの良さの裏には、投句する前の入念な推敲があるのだろう。何度も訂正をかけるのが悪いというのではないが、「覚悟のほど」を感じるのは、やはり、訂正をせずに一回で投句を終わらせる俳句である。
選者の意向を推し測って選者の好みそうな俳句を投稿してみても、うまくいかないのは当たり前のこと、選にとられなくてもそれはそれで仕方ない、むしろ自分の俳句を大切にしようという態度のほうがいい結果を生み出しているのかもしれない。
俳句は基本的には五七五の十七文字しか使えない。その短さゆえに、いい俳句悪い俳句の違いが人によって極端に分かれることがままある。朝日俳壇は四人の選者が同じ投句はがきを読みまわして、一人が十句選をする共通選だが、選が重なることはめったにない。選者によってこうも採りようが変わるものかと思うほどである。百人いれば百人の選があり、千人いれば千の選があるのが俳句。多くの人から受け入れてもらおうと思うより、自分はこれでいいと思うくらいの覚悟が必要なのかもしれない。(m)_大呂15号編集後記より