今日の季語_余花
【鑑賞】
書き暮れてしみじみひとり余花の雨 岡本眸
余花というと、どことなく寂しさがつきまとう。名残りの思い、それがこの季語の本意であろうか。
岡本眸の句、「しみじみひとり」に余花の寂しさが現れている。
——-
*
若葉の花、青葉の花、夏桜
【関連季語】
残花
【解説】
葉桜の中に咲き残る桜の花のこと。残花は春で余花は夏になる。
【分類】
初夏・植物
【例句】
餘花もあらぬ子に教へ行神路山 | 太祇 |
餘花いまだきのふの酒や豆腐汁 | 召波 |
風開く南障子や夏桜 | 調和 |
上野山餘花を尋ねて吟行す | 正岡子規 |
余花の雨布団の上の鼓かな | 松本たかし |
指先に痩身触れぬ余花の冷 | 阿部みどり女 |
病床に余花の曇りの空ばかり | 阿部みどり女 |
かつらぎのふところ深く余花と会ふ | 稲畑汀子 |
書き暮れてしみじみひとり余花の雨 | 岡本眸 |
余花白し若狭の旅のはじまりに | 加藤三七子 |
沿ひ来つつ瀬にそふ余花の宿をとる | 皆吉爽雨 |
母つれて御陵めぐりや余花の雨 | 岸風三楼 |
道々の余花を眺めてみちのくへ | 高浜虚子 |
余花に逢ふ再び逢ひし人のごと | 高浜虚子 |
みちのくの余花の浜辺の小舟かな | 高木晴子 |
岩水の朱きが湧けり余花の宮 | 芝不器男 |
余花といふ消えゆくものを山の端に | 大串章 |
余花明り遡る魚ありにけり | 大野林火 |
あづかりし厨は早目余花の雨 | 中村汀女 |
余花ちぎる風雨や江戸の荒事師 | 長谷川かな女 |